ふと書店で手に取った本が『めちゃめちゃ良書だった』なんて経験、一度はありませんか?
僕はまさに先日『めちゃめちゃ良書だった』本にたまたま出会うことができたので、紹介したいと思います。
キャリアに悩んだり、転職を考えている方にはぜひ「好きなようにしてください」を読んで頂きたいです。
僕の前職は様々な求職者の方にキャリアをアドバイスするキャリアコンサルタントでしたが、もっと早く読むべきだった……と痛烈に後悔させられました。
『好きなようにしてください』ってどんな本?
『好きなようにしてください』は一橋大学院の教授である楠木建さんが執筆したビジネス本です。
ビジネス本といっても経済とか世界情勢のような小難しい話は一切なく、大学生や社会人からのキャリア相談に『一問一答形式』で回答する、というシンプルで読みやすい内容。
そしてなんといっても楠木先生の回答が最高にオモシロい。電車で読んでいると吹き出してしまい周囲に変な目で見られるレベル。
賢明な皆様でしたらお分かりかと思いますが、『好きなようにしてください』という本書のタイトルでも予測できるように、楠木教授の回答はどんな相談に対しても『好きにしてください』から始まります。
質問者の質問は真剣にキャリアを考えた末の切実な質問。なのにテキトー過ぎる回答に笑いますw
しかし序盤はテキトーに答えているように見えて、徐々に悩みの本質に切り込んでいく。
悩みに対する回答では
『リスク管理をしているせいかあなたはご自身のリスクを管理しすぎです』
『にっちもさっちもどうにもわかりにくい相談ですね』
こんな感じでユーモアを随所にはさみながらも、最後にはしっかりと悩みの本質を明らかにしてくれる痛快さには目を見張るものがあります。
質問内容は主にキャリアに関することが中心。そこから広がって転職や独立、仕事辞めたいなど『あ~、わかる!』と共感できるものが多いですね。
だから他人事ではなく、自分の潜在的な悩みもズバっと切り捨ててくれる感じがする。400ページ以上あっても最後までスラスラと読めてしまいました。
『好きなようにしてください』はどんな内容?
前述しましたが内容は様々なキャリアの悩みを持つ読者からの相談を、著者が『好きなようにしてください』と一刀両断します。もうあなたの中に答えはあるじゃないですか、というスタンスなんですね。
とはいえ見どころはここから。著者は現状のお悩みポイントを明確にしてから、ロジカルに解説しながら『今一番ワクワクすることをやるべき』と相談者の背中を押してきれいにまとめる内容になっています。
相談する時点で答えは出てるんでしょ、あなた。というスタンスを一気通貫していました。
さて、こちらは本書からの抜粋です。
都内の大学に通う22歳です。ずばり先生にお聞きしたいのは、経営者になるためには、どのようなキャリアパスを歩むのが一番、成功の確率が高いか、です。
これまで、井深大、本田宗一郎といった日本の起業家や、ジョブズ、ザッカ―バーグ、ベゾスといった世界の起業家の本を読みあさり、彼らのような経営者になりたいと強く思うようになりました。まだいまは、「特にこれをしたい」という事業領域はないのですが、とにかく経営者になりたいと思っています。経営者に至る道はさまざまだと思いますし、そもそも才能がないとダメだとは思います。そして、私に才能があるかはわかりません。私のように、経営者になりたいけれど、何をしたいかまだ固まっていない人間は、どんな企業や分野から、ビジネスマンとしての修行を始めるのがいいでしょうか?
う~ん……なんとも大学生らしい意識高い系な質問ですよねw
ぶっちゃけ僕も学生の時は同じようなことを考えていたので他人事ではありません。
そしてこれに対する楠木教授の回答がコチラ。
愚問をいただき、ありがとうございます。しばらくは好きなようにしていてください。そのうちにこういうヘンなことを考えなくなるのでご安心ください。
こういう質問をお受けすると、人間の性を痛感します。人間というのは、実に虫がいい考え方をするものです。とにかく手っ取り早く、最小のコストで成功する「法則」や「方程式」を求める。若い人ほどそういう傾向が強いように思います。あなたに限らず、若いうちは多くの人がこうした安直な解を求めるものです。
ハゲ頭の説教として聞いていただきたいのですが、率直に言ってあなたは「怠け者」です。当然の話ですが、仕事の中身が経営者であるかどうかにかかわらず、「最適なキャリアパス」など世の中には金輪際存在しません。ましてや経営者という仕事はそんな事前に「成功の確率」をはじき出せるようなものではありません。
(以下略)
いや~、痛快ですねw秒殺ですw
自虐的なネタを挟みつつ、『あなたは怠け者』といってしまうストレートさ。
しかし最後にはキッチリ本質をついた健全な回答で返してくれます。
夢と欲は異なる。このことをまずは知るべきです。経営者になる以前の問題として、社会でまっとうな仕事をするためにぜひとも知っておくべきことだと僕は思います。
井深さんや本田さんやジョブズさんが、何ゆえ人々を惹きつけ、偉大な経営者に慣れたのか。理由は単純です。経営者としていい仕事をして成果を出したからです。
「いい仕事をする」とはどういうことか。これにしても、答えは実に単純です。自分以外の誰かの役に立ったということです。大きな仕事を成し遂げたということは、すなわち自分以外の誰かに対して、大きな価値を作ったということです。
(中略)
経営者はそういう仕事の目的・目標があって、それを実現するために経営をしているわけです。経営者になること、起業家になること、自分が成功すること、この手の自分を向きまくった欲では仕事の目的にはなりえません。
うわ~、これ以上ない素晴らしい回答ですよね。
質問者は大学生なので、ちょいとキツめの回答にも感じますが、経営者になるのは手段であり、目的ではない。
キャリアを考える学生にとって、今知っておいたほうがいいことに感じます。
社会に出てからこんなこと教えてくれる上司や先輩なんてほとんどいませんからね。
キャリア相談はどうしたって固くなりがですが、ユーモアから入り、誰もが触れやすい文章にしつつ、読者が知っておくべきことをしっかり伝えることを忘れない。
このストーリーの作り込み方はさすが、のひと言です。
このように、共感できる質問とユーモアありの本質を突いた回答が50個もあり、たったの1000円ちょっとで読めてしまいました。
いかがでしょう?
もっともっと楠木教授の回答を読みたくなってきませんか?
『好きなようにしてください』の感想は?
この本の感想をひと言でいうと『頭が良くなった』です。
この感想がすでにアホっぽいですが……
この本の質問者の内容って、とても共感できるものが多いんですよね。
例えば『大企業とスタートアップで迷っている』『上司のえこ贔屓に耐えられない』とか。
自分の身にも覚えがある、モヤモヤしたまま放置していた疑問に対して、非常に納得度の高い答えを提示してくれるのが『好きなようにしてください』なのです。
僕は本を読むことの一番のメリットは「自分の価値観と哲学を広げる」ことにあると思っていて、この本はまさに読者に対して新たな価値観と哲学を付け加えてくれる良書になっています。
今も人からキャリアの相談を受けることがありますが、この本から回答したものは結構あったりします。
まあキャリアの悩みなんて結局は『答えはもう君の中にあるんだから君の好きにしなよ』で完結するんですけどね。
まとめ
今回ご紹介した『好きなようにしてください』は読書サイトやAmazonのカスタマーレビューでも高評価を連発している人気の本です。
もともとはNewsPicksのコラムとして連載されていたものなので社会的評価も高く、それでいてあまり本を読めない方でも手に取りやすい本になっています。
一問一答形式だからちょっとずつ読めるし、何度読み返しても楽しめますよ。
キャリアに悩んだり自分の価値観、哲学を広げたい方はぜひ読むことをおススメします。
ではでは。